柔道と私
小茂田 敦
はじめに
令和6年1月の能登半島地震でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。被災地の1日も早い復旧と復興をお祈りいたします。
今年2月の福岡県柔道協会役員総会において第5代会長に選任され、4月から正式に就任いたしました。これまで25年間という長きに亘り、福岡県のみならず全国の柔道界を牽引され、多大なご尽力を賜った藤田弘明前会長の後任ということで、責任の重さに身の引き締まる思いであります。
選手時代
私の柔道人生は、叔父と次兄(現広島県柔道連盟会長)が柔道をしていたことから始まります。中学校で陸上部の傍ら、叔父が指導していた長崎県対馬市の警察署道場で週2回の稽古を積みました。中学3年生の時に出場した長崎県大会の個人戦で優勝したことを契機に、福岡県立嘉穂高校へ進学しました。嘉穂高校では名門柔道部の伝統に触れ、「一意専心」で取り組んだことを覚えています。故松岡徹先生、藤川純先生の厳しくも心のこもったご指導を受け、高校3年生の九州大会、金鷲旗高校大会で団体戦の中堅として出場し優勝することができたのは輝かしい思い出となりました。大学は、次兄の勧めもあり福岡大学へ進学しました。大学4年生では主将を務め、団体戦・個人戦ともに全国大会に出場しましたが、芳しい活躍はできませんでした。
指導者として
大学卒業後は指導者の道へ進みたいと考え、保健体育科の教諭となりました。最初の勤務地である福岡県立稲築高校(現稲築志耕館高校)で柔道部監督としてスタートを切りました。当初は部員も足りず、未経験者でもとにかく声をかけて勧誘をしましたが、受身からの指導で時間がかかりました。指導の根幹として、選手にはいつも「目的」と「目標」を持ち、取り組んで行こうと伝えていました。目的は「人間的成長」であり、目標は当時「県大会出場」でした。何とか部員数を揃え、鍛え、県大会に出場することができました。出場するからには生徒に勝つ喜びを味合わせたく思い、8年間よく稽古をしました。
その後、平成7年に母校である福岡県立嘉穂高校へ赴任し、退職までの29年間、柔道部の監督を務めました。ここでも「目的」と「目標」をしっかり伝えましたが、「目標」は「全国優勝」に変わりました。赴任当初は、89年の伝統と実績ある母校柔道部ということで大変なプレッシャーでしたが、団体戦で福岡県大会優勝が5回、九州大会優勝が4回、金鷲旗高校大会ベスト8が2回という成績を残すことができました。しかし全国大会優勝という目標は達成できませんでした。この間に、福岡県高体連柔道専門部委員長を5年間、九州高体連柔道専門部委員長を3年間、この度の会長就任までの4年間は筑豊地区柔道協会長を務めました。
福岡県柔道協会会長として
我が福岡県は、全日本選抜体重別選手権大会と金鷲旗高校大会の開催地であり、今年4月の全日本選抜体重別選手権大会では、福岡県に縁のある選手が多数活躍しました。中でも南筑高校出身の古賀若菜選手、山口県出身ですが福岡大学から福岡県警に進んだ青野南美選手が、若い力を存分に発揮し優勝したことは大変喜ばしいことです。これからも後に続く選手が誕生していくような環境を作っていきたいと思います。また高校生にとっては、全国選手権、インターハイとともに高校3大大会の1つである7月の金鷲旗高校大会は、多くのトップアスリートが誕生しています。フランス・パリで開催されるオリンピックの出場が決定している南筑高校出身の素根輝選手(女子78㎏超級)もその一人で、金鷲旗高校大会決勝において5人抜きをしたことは記憶に新しいところです。その後の彼女は世界大会での活躍も目覚ましく、東京大会に続くオリンピック2連覇を期待しています。
柔道人口の減少は本県のみならず全国的にも止まるところを知らず続いています。また、中学校、高校での指導者不足の問題も深刻です。昨年5月から、新型コロナウイルス感染症が5類感染症となったことを受け、大会や稽古の在り方も以前のような形を取り戻しつつあります。これを好機として、コロナ禍の3年半で試行錯誤を繰り返してきたことを生かし、より一層充実した体制作りをしていく必要があります。本県には、青少年育成を掲げる「福岡柔道クラブ」があります。今まで取り組んできたことを原点とし、環境拡充をより一層図ることで、子どもたちがもっと身近に気軽に柔道に触れ、そこから大きく成長できるようにしたいと考えています。そして、柔道未経験者であっても大会運営等に携われる明確な指針を作り、若い指導者の増加を支援することが協会の役割の1つと考えています。
令和7年秋には、福岡武道館が移転、新築される予定です。新たな気持ちで、嘉納治五郎師範が唱えられた「精力善用・自他共栄」の精神を忘れることなく、最高の柔道家を育てるべく、その一助となれるよう努力邁進していく所存です。経験も浅く実績もございませんが、今後のご指導、お力添えをよろしくお願い申し上げます。
(福岡県柔道協会会長)








