能登半島地震から1年が経過して
中西茂宏
はじめに
2024年1月1日、能登半島沖を震源地とする大地震が発生し、約1年経過した12月の時点で、石川県における被害状況は、死者約450人、負傷者約1700人、住家被害は合計で約93000棟となっています。柔道関係者では、人的被害はなかったものの住家の被害に見舞われました。さらに9月には記録的な豪雨が能登半島を襲い、相次ぐ災害に多くの柔道関係者が胸を痛めました。
地震発生当時から現在にかけて、全国各地から安否確認や温かい励ましの言葉を数多くかけていただき、また多大なる支援をいただいたことに対し、心から感謝し、誌面をお借りしてお礼申し上げます。この度は本県柔道に対する各地からの支援、現状、今後の展望についてご報告致します。
全国各地からの支援⑴
全国各地から、県柔道連盟や県中体連、県高体連に対し支援金を頂戴しました。
支援金につきましては、被災した団体、指導者、選手の柔道衣購入、県内外への出稽古や大会出場における旅費、練習施設使用料を中心に、能登地区の方々の柔道活動継続を目的とし活用しました。
全国各地からの支援⑵
多くの柔道家の皆さまが石川県に足を運んでくださり、また各地にご招待いただき交流していただきました。
① 全日本柔道少年団交流合宿
昨年3月に講道館にて行われました。輪島柔道教室、雄志館、志賀町少年柔道教室、中能登少年柔道教室から選手29名・引率者3名で参加しました。また、参加した29名の児童・生徒に、揃いの柔道衣をプレゼントしていただき、子どもたちは大変喜び、笑顔を見せていました。
② QUMANOMI支援活動 スポーツ交流
4月に男性コーラスグループ、QUMANOMI(クマノミ)さまが主催された支援活動の一環で、羽咋市武道館において井上康生先生、谷本歩実先生による柔道教室が行われました。
③ 阿部一二三選手とのオンライン交流
日本オリンピック委員会主催で、輪島市の小学生から高校生までの合せて8名が参加しました。子どもたちが住む穴水町の自宅とパリをオンラインでつなぎ、金メダルを獲得して間もない阿部一二三選手が登場し、子どもたちと交流していただきました。
④ 日本大学柔道部柔道教室
8月に日本大学柔道場にて行われました。3月の講道館での柔道交流合宿に参加できなかった全日本柔道少年団七尾分団の児童・生徒らが参加しました。日本大学OB・リオデジャネイロオリンピック男子100㎏超級銀メダルの原沢久喜選手が講師を務め、内股の講習や乱取等が実施されました。地元の武道館が使用できない七尾分団の子どもたちには、とても有意義な経験となりました。
⑤ 羽田タートルサービス柔道教室
10月に羽田タートルサービスさまの主催、松柔会(東海大学柔道部OB会) さまの主管による柔道教室が行われました。上水研一朗先生、井上康生先生、村尾三四郎選手が講師としてお越しくださり、午前は中学生、午後は小学生と合せて300人を超える参加となりました。選手のみならず保護者も大喜びで、笑顔の絶えない1日となりました。
⑥ TEAM JAPAN SPORTS DAY 能登半島復興支援 交流イベント
11月にレスリング女子でオリンピック2連覇の金城梨紗子選手、阿部一二三選手、阿部詩選手が輪島市立輪島中学校を訪れてくれました。イベントでは小学生と綱引きや玉入れを行い、柔道の子どもたちも笑顔で参加していました。
⑦ 講道館杯応援ツアー
コマツさまのご支援により、能登の少年たちが講道館杯の応援に参加しました。テレビで見る選手たちがたくさんいる会場に驚きを隠せず、刺激的な1日になったようです。
⑧ 中村兼三先生、塘内将彦先生柔道教室
2025年1月に行われた石川県中体連強化合宿に併せて両先生が来県し、柔道教室をしていただきました。
⑨ 教室間での支援
他にも柔道教室間の繋がりで、多くの団体さまが支援のために能登まで足を運んでくださいました。
現状
震災から約1年が経過した現在、「復旧は進んでいる」とは言い難い状況です。しかし、そのような状態であっても、指導者たちは柔道を止めず、むしろ震災前よりも活発に活動しているようにすら感じられます。本拠地での活動が再開できた教室、新たな場所を見つけ活動を戻そうと動き出した教室もあります。一方、地震発生日の状態のまま、活動場所が使用できず、出稽古中心の活動をせざるを得ない教室もあります。まだ頻繁に能登地区では地震があり、大変な状況であることには違いありませんが、「柔道」という絆を感じられる日常を過ごしています。
今後の展望
我々ができることは1つしかありません。「柔道を通じた持続可能なコミュニティの形成」です。その達成には、継続的な人材育成は欠かせません。「当たり前のように過ごしてきた環境が、実は当たり前ではなかった」ということを、私も含め多くの関係者は今回強く感じたことでしょう。それは稽古ができること、仲間と集まること、温かいご飯を食べること、親から送迎してもらえることなどです。そして、それらは実は多くの方々の支援があってこそ成り立っていました。
近年、世の中は何をするにも便利になり、自ら求めなくても与えられることも増えてきましたが、それによる弊害を感じることも少なからずありました。本県の関係者は今回の震災を経て、辛いことも数多く経験しましたが、日本全国の柔道家の皆さまの優しさに触れ、多くの励ましをいただくなど、当たり前に過ごしていてはできない経験もしました。これらは、今後の人生において活かされるものであると確信しています。強さと優しさを兼ね備えた柔道家の育成を継続していくことで、「世を補益する」ことができるようになると考えます。今回受けた恩をしっかりと返せるように引き続き県一丸となり頑張りたいと思います。
(石川県柔道連盟会長)








